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blog 木の家はなぜ日本の風土に合うのか

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古くから日本では「木と土と草」を使って住宅を建ててきました。

これらの素材は、単に身近な素材だというだけでなく、日本の風土にとって非常に有効だったのです。

なぜ日本の風土に木が合うのか考えてみましょう。

 

日本は北は北海道から南は九州、沖縄まで草木が茂る国です。

草木が茂るというのは雨が多いということ。

一年を通して乾季というのがありません。

海外と比べれば一年中潤っているのが日本という国だといえるでしょう。

それゆえに木材資源が豊富なわけです。

 

しかし、一方、湿気が多い気候であり、湿気は人に不快感を与えます。

人間が不快感を感じるのはいろいろなときにありますが、その中でも特に湿気が多いときに受ける不快感は特別なものです。

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その昔、兼好法師が「家のつくりようはを旨とすべし」と書いたのは有名ですが、これは日本では蒸し暑い夏こそ快適に住める工夫をするべきであり、それが住まいの快適さを考える出発点であるということなのです。

 

たとえば、夏場の室内環境を快適にしようとする場合には一般にエアコンで室温を下げますが、室温を下げなくとも室内の湿度を下げるだけでとても快適になります。

室内の湿気を調整することが快適さにつながるのです。

 

そこで、木という素材の特性が生きてきます。

顕微鏡で見ると木にはたくさんの小さな穴があいています。

その無数の穴には空気が入っていて、その穴に空気中の水分が取り込まれたり放出されたりするのです。

 

木は多孔質の素材で、湿度が高くなればその無数の小さな穴に湿度を含み、乾燥してくればそこから湿気を吐き出します。

そうした湿度調整機能が木にはあるのです。

木をふんだんに使った家は調質機能が効いていて、湿気が調整されているのです。

木の家が快適に感じられる第一の理由はそこにあります。

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特に梅雨時など、木の家は玄関ドアを開けて入ったとき爽やかな感じにつつまれます。

この快適さは他では味わえないものです。

自然素材としてよく使われる漆喰や和紙などの差材も調質効果の高い素材です。

ちなみに漆喰は「土」、和紙は「草」でできています。

ですから、湿度の高い日本では調質効果のある自然資材をふんだんに使った家はとても快適なものとなるのです。

 

木の中でも特に杉の多孔質さは際立っています。

もちろん際立った多孔質さは素材の柔らかさにつながるのですが、同時に調質効果が高いということでもあるのです。

国産の杉材をふんだんに使った家の快適さは、他に比べようがないほどすばらしいものです。

国産の杉は、湿潤な気候に合っていて、国産材を使うことには大きな意味があります。

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外国から運んできた木材が、日本の風土に合わなかった例はよくあります。

一時期、北米からモミの木が大量に輸入されたことがありました。

北米のモミの木は、緯度が高い寒冷な地方で育った木です。

手つかずの原生林でまっすぐに育ったモミの木は、加工もしやすく建築用材に適しているため、北米ではツーバイフォーのフレーム材に使われています。

そうした木を日本に大量に輸入して使ったのです。

 

しかし建築後しばらくしてトラブルが発生しました。

北米のモミの木でつくった家の多くが、日本の湿気で腐ってしまったのです。

寒冷な地方で育った木ですから、温暖で湿潤な日本の気候で使うのに無理があったのです。こうした苦い経験からも、その土地で育った木を使うことが一番よいという考えが生まれてきます。

何よりもその土地の気候風土に合った素材が一番いいのは間違いありません。

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